監督署の調査が増えています

労働基準監督署が立ち入り調査をすることを「臨検」といいます。

 

この臨検が近年多く、厳しくなってきています。

 

臨検にはいくつかの種類があります。

 

 

①定期監督(年度ごとに重点業種や重点項目を定めておこなう調査)

②申告監督(労働者からの通報により、ピンポイントでおこなう調査)

③災害時監督(災害が起こった際に、原因究明と再発防止のためにおこなう調査)

④再監督(是正勧告をおこなった会社に再度訪れて、是正箇所の確認をおこなう調査)

 

 

この中でも、②の申告監督が増えています。原因のひとつとしては、労働者の権利意識が強くなり、サービス残業についての知識や情報が簡単に手に入るため、従業員が監督署へ訴えることが増えたことが挙げられます。

 

また、①の定期監督でも、サービス残業が多く休日数が少ないと見られている業種など、業種に特化して一斉に行われる場合が増えています。

 

そういった場合に、必ずチェックされる書類や項目があります。

代表的には下記のような書類となります。

   

就業規則 (社員・パート・アルバイトを合わせて10人以上の事業所)

賃金台帳

出勤簿・タイムカード

労働契約書

36協定書 (残業や休日出勤がある事業所)

 

もし、上記の書類の中で、会社に備え付けていない場合は、

それだけで、労働基準法違反となる場合があります。

 

 

まず、監督署への届出が必要な書類として、就業規則と36協定書があります。

 

36協定書とは、残業や休日出勤がある会社は必ず作成して、監督署へ届け出ることが必要な書類となります。

 

これが、提出されていない場合は、残業等はさせてはいけません。届出なく残業させた場合は、労働基準法違反となります。

 

現実的には残業の全く無い会社はほとんど無いと思いますので、必ず作成し、提出をすることが必要です。

 

就業規則につきましては、作成義務(従業員10名以上)の場合は、提出義務がありますので、提出すると同時に、社内での周知義務というのもあります。就業規則は作っただけでは無く、監督署への提出と、従業員への周知を持って適正に運用されているという判断になります。もちろん、法改正があれば変更しておかなければいけません。

 

 

タイムカードや出勤簿では、36協定に収まる範囲で残業が行われているか、タイムカードの時間と比べて適正な残業時間が計上されているか、残業代の計算に問題は無いかといった部分をチェックされます。

 

ここで問題なのが、タイムカードのみで時間管理を行っている場合に、仕事はしてないのに従業員同士で話しをしていて帰りが遅くなった等、実際の終業時間とタイムカードの退社時間にズレがあるときです。そのズレが、タイムカードを見ただけだと残業なのか、仕事をせずにゆっくりしていただけなのかが判断が出来ないことがあると、会社にとって不利益な判断が下される場合もあり、日ごろから残業時間とそれ以外の時間を明確にすることを徹底しておかなければいけません。

 

 

対策として考えられるのは、残業を申告制にすることなどになります。ただ、申告制を導入する場合も、会社がそれを徹底出来ていないと、制度として機能していないと判断がされることになります。また、制度として定着させるために、残業を少なくするための仕事のやり方や、会社の取り組み(ノー残業デイの設定等)も同時の行っていくことが重要となります。

 

是正勧告を受けた場合は、その対応をしっかりと行わなければなりません。特に申告監督の場合は労働者がサービス残業の証拠となるような書類を持っていて、その調査としてきているので、未払いの残業代についての請求が行われます。また、36協定や就業規則の未作成、未提出があった場合は、直ちに取り掛かるようにしましょう。

 

監督官も人の子です。残業代の再計算や未払い分の清算については、時間がかかるようであれば、直ちに取り掛かるが時間がかかる旨を説明し、36協定の提出などすぐに対応出来ることはすぐに対応する、そういった姿勢が必要となります。

 

 

監督署の調査は、飛び込みでいきなり来たり、呼び出しの連絡があったりと、経営者にとっては、とてもストレスのかかることでもあります。 調査内容自体も労働者保護の観点から行われるため、少しでも会社に非がある場合は、そのことについて厳しく追求されることもあります。

 

調査を受けたときに会社の負担が少なくなるために、最も効果的な方法は会社と従業員の信頼関係が築けていることです。そのためには、会社のルールがきちんと定まり、従業員が権利と義務を理解し、会社をよくしていこうと考えて仕事をしてもらう必要があります。適切な労務管理は、会社それぞれで違います。

 

①会社にあったルールを活用し、いつ来るかわからない調査に備え、出来ることから対処していく。(就業規則等最初に出費がありますが、安心出来る職場環境に近づく)

 

②調査に来たら来た時で、指摘を受けるまでは何も対応しない。

(今すぐの出費はかかりませんが、未払い残業などの見えない負債が貯まっていく)

 

社長の「安心」、従業員の「満足」、会社の「発展」を考えたときには、①を選んで頂けるように是非お考えください。

 

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